今年の節分は2月3日ではなく、2月2日ですね。
これは地球が太陽を回る周期と暦のズレが関係しているそうです。
今年のように2月2日になるのは、明治30年、1897年以来124年ぶりです。
節分には、福豆をまいて邪気を祓いますが、その時の掛け声「鬼は外!福は内!」を聞くと、私はある小説を思い出すのです。
それは、芥川龍之介が大正13年に発表した『桃太郎』です。
『桃太郎』というと桃から生まれた桃太郎が鬼が島に悪い鬼を退治に行く勧善懲悪の物語ですが……。
芥川龍之介の視点から紡ぎ出されたものは、全く違う物語になっています。
桃太郎が鬼退治を思い立ったのは、育ててくれたお爺さんやお婆のように、山や川、畑に仕事に出るのが嫌だったせいで、老人夫婦も腕白者に愛想をつかしていた時だったので、出陣に必要なものを用意して、黍団子もこしらえてやったというのです。
それでは、鬼はどのように描かれているのかということで、その一部をご紹介します。
「鬼が島は絶海の孤島だった。が、世間の思っているように岩山ばかりだったわけではない。実は椰子のそびえたり、極楽鳥のさえずったりする、美しい天然の楽土だった。こういう楽土に生をうけた鬼は勿論平和を愛していた。いや、鬼というものは元来我々人間よりも享楽的に出来上がった種族らしい。」
こんなふうに、鬼は平和主義者、桃太郎は侵略者として位置づけられ、時代背景を感じさせる表現も盛り込まれていて、私の心に深く響きました。
ひとつの視点から、ものを見ることの危うさを感じました。
「鬼」イコール「悪」というイメージがありますが、本当にそうならば、「鬼」という苗字の人はお気の毒だなぁと思い調べてみましたら、いらしたのです!
「鬼さん」鳥取県をはじめ全国で約40人いらっしゃるそうです。
「鬼」という漢字は、かつて力強さを表すものだったそうです。
ある鬼家の方のお話によると……
「鬼家のご先祖様は非常に強い武将で、豊臣秀吉から『お前は鬼のように強いから、鬼と名乗れ』と言われ、鬼という苗字を誇りに思っています。ですから我が家の伝統として、『福はうち、鬼もうち、悪魔そと』と言いますよ」
今年、日本中、世界中の人々が追い払いたい気持ちは一つですよね。
「コロナそと!」
メッセージ、お待ちしております。
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