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執筆者の写真須賀雅子

㊴「季節感」

「そろそろ取り替えましょう」

これが季節の移り変わりの頃、我家で交わされる言葉です。

茶の湯を愛する者ならば、そこで取り替えるのは掛け軸でしょうが、残念ながら我家には一幅もございません。

その代わりに季節感を表現してくれるのが「手ぬぐい」なのです。

最初に飾ったのは、歌川広重の「名所江戸百景 水道橋駿河台」だったと思います。

浮世絵好きの目を惹きつけ、迷わず購入しました。掛け軸とは比べものにならない手頃な価格も魅力でした。

端午の節句の鯉のぼりが手前に大きく描かれ、極端なまでに遠近を強調する構図は広重が多用したものです。

鯉のぼりは5月の江戸の風物詩だったようです。

富士山よりも高く、力強く天に上る鯉の姿は、2年前に起きた安政の大地震の被害を受けた町の復興を象徴しているとも言われています。

 我家の「手ぬぐい」は現在18。

「手ぬぐい」の数え方は、原則としては「本」ですが、広げて使用する場合は「枚」で数えるそうです。……となると、我家の「手ぬぐい」は18枚。

お正月、雛飾り、桜、夏祭り、紅葉、クリスマスなど、それぞれの季節感が感じられるものです。そのほとんどは、旅先で出会ったものなので、函館や青森、京都、浅草での思い出も浮かび上がって来ます。そして、コロナ禍の現在、いつかまた訪れて、新たな「手ぬぐい」と出逢いたいと強く願っています。



メッセージ、お待ちしております。

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