「花びらが……上手く出来なくて……」
こう言って話し方サロンの生徒さんが差し出されたのが『太巻き祭りずし』でした。
私は「わぁ〜!」と子供のように歓声をあげ、美しい花や可愛いパンダに目を奪われてしまったのです。ですから、その花びらのどの部分が良くないのか、全く分かりませんでした。
それは美しいだけでなく、卵焼きや漬物、海苔などが巻き込まれ、作り手の愛情が伝わって来る美味しさがありました。
『太巻き祭りずし』は江戸時代から千葉の郷土料理として、冠婚葬祭の席で振る舞われ、後世に伝えてゆく活動も行われているのです。
私も子供が幼稚園に通っている時、母親たちを対象に行った太巻き祭りずし教室に参加したことがあります。指導してくださった方の『太巻き祭りずし』は見事にまとまっていて、包丁を入れると一枚の絵画が誕生したのです。一方、未熟な私たちの挑みは美しい絵画にはなりませんでしたが、切る瞬間のわくわくする気持ちは忘れられません。
私に『太巻き祭りずし』を作って下さった生徒さんも、郷土料理の伝統を受け継ぎ、そして次世代に伝えようとしていらっしゃいます。その「伝える心」は実に温かく意義深いものだと感じています。
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